院長コラム
COLUMN再び注目されるヨード製点眼薬
2022.11.25 ヨード(ヨウ素)は、わかめや昆布に含まれているひとの身体には必要不可欠なミネラル成分です。体内では、ほとんどが甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンの構成成分として重要な働きをしています。
一方、ヨードは昔から殺菌薬、消毒薬として広く使われてきました。中年以上の方なら、擦り傷などのけがをした時、消毒薬として傷口に塗った「ヨードチンキ」を覚えておられる方も多いでしょう。また、昔からうがい薬として多くの人々に使われてきました。近年、「ヨードうがい薬が新型コロナウイルス感染に予防効果がある。」と言った某県の知事さんが、科学的根拠が無いと批判を浴びてしまった事もありました。
しかし、ヨード剤はウィルスを含めた多くの病原体に有効である事は、昔から良く知られた事実です。眼科手術を含む外科手術の際には手術野の消毒に広く使われています。眼科領域では、洗眼殺菌薬及びヘルペス性角膜炎やアデノウィルス性結膜炎の点眼薬として1965年に承認されていますが、抗ウィルス点眼薬としては、何故かあまり使われませんでした。
しかし、ヨード剤は抗菌スペクトラムが広くどんな細菌やウィルスにも一定の殺菌消毒作用があること、抗生物質のような薬剤耐性菌が生じないことなどの理由から、近年殺菌消毒点眼薬として改めて見直され注目されています。本年9月にはOTC(要指導医薬品)点眼薬として発売され、どなたでも薬局で直接入手できるようになりました。また、先月(10月)の日本臨床眼科学会でもヨード製剤の眼科的活用に関する複数の演題が報告されています。
今後、ヨード製点眼剤が洗眼殺菌消毒薬として広く使用されるようになるものと思います。ご興味のある方は、眼科医または薬局の薬剤師さんにご相談ください。
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コンタクトレンズと点眼薬
2020.03.25「コンタクトレンズ(CL)を装用したまま目薬を点眼しても良いですか?」という質問をしばしば受けます。点眼薬の中には、主薬剤の他、防腐剤や界面活性剤等が入っているものがあります。特に防腐剤として広く添加されている塩化ベンザルコニウム(BAK)には、細胞毒性がある事が実験的に確認されており、角膜障害の原因となり得る薬剤として広く知られています。また、BAKはソフトコンタクトレンズ(SCL)特に高含水のSCLに浸み込んで蓄積されるため、SCL装用眼では、より重篤な角膜障害を引き起こしたり、CLの性状を変えてしまう可能性が示唆されています。そのために、BAKを含んだ点眼薬の説明書には、「SCL装用眼には使用しないこと」と書かれています。また、多くの眼科医は、SCL装用者にBAK含有点眼薬を処方する際には、「SCLを外してから点眼してください。」と指導しています。しかし、通常私たちが使う点眼薬に含まれるBAKの濃度は、極めて低濃度です。本当にごく微量なBAKが重篤な角膜障害やCL劣化の原因になるのでしょうか?この点について、小玉裕司先生の論文があります。それによると、1232例のCL(SCLとは限らない)装用者について、BAK含有の抗アレルギー点眼薬またはヒアルロン酸点眼薬を処方し、角結膜障害の有無を調べたところ、障害のあった症例は1例も無く、SCLに付着していたBAK量も極めて少なかったと述べています。私のクリニックでもCL装用者にBAK含有点眼薬を処方することがありますが、BAKによると思われる重篤な角膜障害を観察したことは過去に1度もありません。BAKのみならず角膜障害を副作用にあげている点眼薬は多々ありますが、必ずしもSCL装用が角膜障害の発症頻度を高めたり重篤化したりすることはほとんど無いように思います。一日の点眼回数が3,4回以下であれば、SCL装用中であっても、抗アレルギー点眼薬やドライアイ用の点眼薬の使用は、ほとんど問題無いと思います。尤も、最近ではいろいろな種類の点眼薬でBAKの入っていないものが保険適用されていますので、どうしても心配な方は、BAKフリーの点眼薬を処方してもらうように担当眼科医にお話すると良いでしょう。
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